…第4章 麻衣と涼太

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大きい手だなぁ。 さっき、お店にいた時に顔を覆った手を見てそう思ったけれど。 手が大きい、というよりも指が長いんだ。 涼太先輩と手を繋ぐまで分からなかった。 「り、りょうた先輩の指、長いんですね。」 心の中ではほんの少し慣れた新しい呼び方も、いざ口に出すとまだぎこちない。 「指?」 そう聞き返した先輩が、歩道にたむろする飲み会終わりらしい賑やかな団体さんから、さり気なく私をガードしてくれた。 「あっ、ありがとう。…あれ、今日って月曜日なのに。月曜日からこんなに賑わっているなんて不思議。」 思えば、さっきお店に向かう時も、おでん屋さんの店内も。月曜日の割には賑わっていた。 「ああ。明日が祝日だからじゃないかな?」 明日は11月23日。 そうか、お休み前日だから飲み会も多かったのかもしれない。 「さっきの話。指といえば、母が自宅でピアノ教室をやっていてね。確かにピアノ弾くには苦労しなかったかも。」 先輩は繋いでいない右手を広げて、オクターヴを弾く仕草をしてみせた。 「先輩もお母さんにピアノを習ったんですか…習ったの?」 「そうだね、小学校のうちはやってたかなぁ。母は今も教室をやってるけどね。」 少しだけ懐かしそうに話していた先輩。 「うちの母…というか両親、今も仲良くてね。 今日は『いい夫婦の日』らしくて、子どもが大きくなってからは毎年二人で食事に行ってる。」 「いい夫婦の日?」 「11(いい) 22(ふうふ)って、日付を語呂合わせでそう読ませるらしいよ。」 聞き返した私に先輩が教えてくれた。
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