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「いい夫婦の日って初めて聞いたかも。」
そういうの素敵だなぁ。
結婚記念日や誕生日、イベントだけじゃなくて、一日一日を積み上げて、いい夫婦でいられるように。そういうことを再認識する日なのかもしれない。
「子どもが大きくなっても、そうやって二人の時間を大事にしてるご夫婦って憧れちゃうなぁ。りょうた先輩のご両親、素敵〜!」
にこにこと笑う先輩は、さらに続けた。
「麻衣ちゃん、俺たちの付き合い始めた日も『いい夫婦の日』だよ。気づいてた?」
あっ、そうか…!
涼太先輩のご両親のことを素敵だなぁって思っていたけれど。
ついさっき恋人になったばかりの私たちにとっては、今日がお付き合いをはじめた記念日になるんだ。
「ごめんなさい、今気づいたかも。」
鈍くて気づかなかった私を見下ろした先輩は、微笑みながら、気にしないで、って呟いた。
「二人とも、父親や母親としてもすごくよくしてくれたけど、昔から仲が良いんだ。
結婚しても子どもが生まれても夫婦の時間を大切にできるのは、自分の両親だけど良いことだと思うよ。そんな風に、ずっと記念日を祝っていけたらいいよね。」
「うん、本当に素敵だなぁって思う。」
そうやって、これから先も記念日をお祝いする恋人同士でいられたらいいな。
繋がれた先輩の大きな手の温かさを感じながら、そう思った。
寒い地上から駅に着いたので、やっと外の寒さから解放された。
遅い時間でもまだ人のたくさん集まる駅をエスカレーターで地下に降りて、地下鉄の改札を抜けた。
家まで送ると言ってくれた先輩に甘えて、一緒に地下鉄に乗る。
まだそれほど遅い時間でないけれど、少し混み合っている車内。涼太先輩と手を繋いだまま、いつもどおり他愛のない会話を交わす。
時間はあっという間に過ぎて、私の最寄り駅に到着した。
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