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マンションまでの道は、何故か二人とも言葉少なく手を繋いで歩いた。
でも、その静かな時間も不思議と心地いい。
あっというまにマンションのエントランス前にたどり着いた。
繋がれた手が温かくて、心地よくて。
手を離すことが躊躇われてしまう。
「送ってくれて、ありがとう。」
立ち止まって、涼太先輩の顔を見つめる。
先輩の色素の薄い瞳も、私を見つめている。
その表情を、何と表現すればいいのか分からない。
いつも可愛いなぁと言ってくれる時の表情とはまた違っていて。
私を…好きだと思っていてくれる表情、なのかなぁ。
今まで見ていた先輩の笑顔とも違う…初めて見たその表情に、何故かドキドキした。
「駅から…あっという間だったね。」
「そうで…そうだね。」
「あー離れがたいなぁ。」
そう言いながら指を絡めて繋いだままの手をギュッと握った先輩。
「麻衣ちゃんがもしよかったら、ドアの前まで送ってもいい?」
「もちろんです。」
そのまま、マンションの中に入った。
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