…第4章 麻衣と涼太

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玄関の鍵を開けて、中に入った。 いつも以上に暗い、リビングのカーテン越しにも月の光が届かない部屋。 ブーツを脱いで、電気も点けずに部屋に入る。 コートも脱がずにまっすぐソファに向かって、腰かけた。 嬉しいようなくすぐったい気持ちと、何故かほんの少しの切なさ。 そんなものが私の胸の中に同居している感じ。 どれくらいそのまま過ごしていたのか。 急にぶるっと寒さを感じたので、暖房の電源スイッチを入れて、やかんを火にかけた。 その間にベランダへと続く窓を開けた。 星も見えないくらい真っ暗な空。 でも、今は何もない真っ暗な闇のように思えるけれど。 空には確かに星があって、季節ごとに違う星座が見られて、目に映る景色が移り変わっていく。 月は満ちては欠けて、欠けては満ちてを繰り返す。 そんな空の移り変わりのように。 人の心も、人と人との関係も。 きっと何もないところから始まって。 言葉を交わして、心を寄せ合って、点と点を繋ぐ星座のように、いつか何かの形を成すのかもしれない。 私と涼太先輩は、まだ始まったばかり。 二人で、これから心地よい関係を築いていけますように。 真っ暗な空に向かって、そう願った。 そんな、涼太先輩と私のはじまりの夜だった。
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