…最終章 麻衣

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今日の待ち合わせは、最寄り駅から繁華街とは反対方向に数駅先の駅。 地下鉄に乗って移動しながら、腕時計を確認する。 うん、時間はちょうどよく着きそう。 蓮太郎は、もう着いてるかな? 地下鉄が待ち合わせ駅に到着して、車両から吐き出される人の流れに乗って、階段を上った。 改札を抜け、さらに階段を上って地上に向かう。 …いた! 蓮太郎は、もう着いていた。 就職してからは、蓮太郎と会えるのは月に1回あるかどうか。 スーツにコートを羽織った姿を見るのは初めてだ。 春の入社の頃は、お互い仕事に慣れるので精一杯で、飲みに行く余裕はなかったし。 一番最後に会った時はまだ雪は降っていなかった。 コートを着ていたかどうかが、会っていたかどうかの目安になっていることに気づく。 学生の頃は私服で会っていたから、スーツ姿の蓮太郎を見るのはいつも新鮮に思える。 相変わらずイケメンだなぁ。 久しぶりに会えたのが嬉しくて、階段を上がりきる前に声をかけた。 「蓮太郎!」 私が呼んだのに気づいて、蓮太郎は目にしていたスマホから顔を上げた。 こちらに気づいた蓮太郎に小さく手を振った。 階段を上がりきった私に、蓮太郎が声をかけた。 「麻衣、お疲れ。」 お互いに、吐く息が白い。 「寒いね、本当に!」 「…だな。」 「で、お店どこにあるの?近い?」 「ここから、割と近い。足元気をつけて。」
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