150人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
今日の待ち合わせは、最寄り駅から繁華街とは反対方向に数駅先の駅。
地下鉄に乗って移動しながら、腕時計を確認する。
うん、時間はちょうどよく着きそう。
蓮太郎は、もう着いてるかな?
地下鉄が待ち合わせ駅に到着して、車両から吐き出される人の流れに乗って、階段を上った。
改札を抜け、さらに階段を上って地上に向かう。
…いた!
蓮太郎は、もう着いていた。
就職してからは、蓮太郎と会えるのは月に1回あるかどうか。
スーツにコートを羽織った姿を見るのは初めてだ。
春の入社の頃は、お互い仕事に慣れるので精一杯で、飲みに行く余裕はなかったし。
一番最後に会った時はまだ雪は降っていなかった。
コートを着ていたかどうかが、会っていたかどうかの目安になっていることに気づく。
学生の頃は私服で会っていたから、スーツ姿の蓮太郎を見るのはいつも新鮮に思える。
相変わらずイケメンだなぁ。
久しぶりに会えたのが嬉しくて、階段を上がりきる前に声をかけた。
「蓮太郎!」
私が呼んだのに気づいて、蓮太郎は目にしていたスマホから顔を上げた。
こちらに気づいた蓮太郎に小さく手を振った。
階段を上がりきった私に、蓮太郎が声をかけた。
「麻衣、お疲れ。」
お互いに、吐く息が白い。
「寒いね、本当に!」
「…だな。」
「で、お店どこにあるの?近い?」
「ここから、割と近い。足元気をつけて。」
最初のコメントを投稿しよう!