…最終章 麻衣

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バーテンダーさんが近づいて来たので、オーダーを決めてなかったことに気づいた。 何にしようかな…とメニュー表を眺める。 「カシスソーダと、バーボン水割りで。」 その間に蓮太郎がさっさと注文してしまった。 「かしこまりました。」 ああっ!頼んじゃった。 バーテンダーさんが離れた後、少しだけ恨めしげに不満を零す。 「もう、勝手に頼むんだから。」 「飲むだろ?カシスソーダ。」 当然のようにそう答える蓮太郎に、 「そうだけど…。」と返すものの。 「じゃあ、いいだろ。」 勝手に注文したことに文句を言おうと思ったけど、別に怒ったりはしていないし。 何より、カシスソーダが大好きだから。 「…ま、いっかぁ。」 なんだかこのやり取り、前もしたような…? そんな会話をしているうちに、タイミングよく飲み物がきた。 金属のコースターが先に並べられ、その上にカシスソーダとバーボンの水割りが置かれた。 「「 乾杯 」」 二人の声が重なるのと同時に、グラスをぶつけて乾杯した。 少し渇いていた喉に、カシスソーダが染み渡る。 「あー、やっぱり美味しい!」 隣でバーボンのグラスを傾けている蓮太郎が、フッと小さく笑った。
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