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お互いに喉を潤して一息ついた。
やっと落ち着いた心地がしてホッとした私に、蓮太郎が少しだけ様子を窺うようにして話しかけてきた。
「それ、彼氏からもらったのか?」
蓮太郎の目線の先を辿ると、私の左手薬指の指輪を見ていた。
「ああ、これ?」
そうだ、指輪をもらったのはつい先月のこと。
最後に蓮太郎に会った時には、まだこの指に指輪は嵌められていなかった。
指輪はシルバーの、小さなダイヤのような石が半周分ほど並んでいるもの。
サプライズで贈ってくれた涼太の気持ちが嬉しくて。
あの、指に嵌めてもらった時の気持ちを思い出す。
続けて、指輪を着けてその後出社した時に、先輩たちに騒がれたことを思い出した。
まるで芸能人の結婚報告会見みたいな反応だったなぁ。
インタビュアーのように、指輪見せてください!…って、エアマイクを向けるように言われたんだった。
あの時を思い出して、芸能人みたいに左手を顔の横に掲げた。
「うん、涼太にもらったんだぁ。」
「まさか、プロポーズされた?」
少しだけ驚いた様子の蓮太郎に、否定の言葉を返した。
「違うよ。これはね、付き合って3年目の記念にくれたの。」
「ふーん。良かったな。」
そう呟いた蓮太郎は、指輪の話題にもう興味を失くしたように見えた。
なんだか私自身にも興味が無くなったように勝手に感じてしまって、悲しいような淋しいような気持ちになる。
「何その棒読み!良かったなんて思ってないでしょ?」
つい、そんな風に言い返してしまった。
「そんなことないよ。」
そう呟いた蓮太郎は、またゆっくりとグラスを口に運んだ。
何か物思いに耽るような表情。
それ以上何も言えなくて、私もそっとカシスソーダを飲み込んだ。
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