…最終章 麻衣

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喉を潤すためにカシスソーダを飲み干すと、あっというまにグラスは空になった。 蓮太郎のグラスをちらりと見ると、そろそろ空になりそう。 「飲み物、そろそろ頼むか?カシスソーダ。」 同じタイミングでグラスの残量を見ていたらしい蓮太郎がバーテンダーさんを呼ぼうとした。 あっ…! 慌てて蓮太郎を止めた。 「ちょっと待って!何飲もうかなぁ。」 洒落た装丁のメニュー表を急いで開き、次にお願いしたいカクテルを探した。 初めて来たこのお店、メニューを見るとカクテルのメニューもウイスキーのメニューも豊富に揃えられている。 ザザッと目を走らせるけど、やっぱり視線が止まるのは「カシスソーダ」の文字。 …また後で、他のものも頼んでみよう。 「うん、決めた!……カシスソーダで。」 「もう、見なくてもカシスソーダでいいだろ。」 まるで知ってたとでも言いたげな蓮太郎の表情には、ちょっとだけ抵抗したくなってしまう。 「だって、たまには他のものを飲みたくなるじゃない?」 「ならないよ。俺もお前も。」 「でも、勝手に注文しないでよ?」 「はいはい。」 蓮太郎がバーテンダーさんを呼び、2杯目をオーダーしてくれた。 オーダーしてからドリンクを作るまで、とても手際の良いバーテンダーさんだなぁ。 その流れるような動きに、つい見入ってしまう。 そのまま速やかに運ばれてきた2杯目のカシスソーダを、ゆっくりと飲み込む。 蓮太郎とは業種の違う仕事に就いたから、お互いの仕事の話をするのは新鮮だし、参考になる。 もちろんそれ以外の話だってする。 映画館に映画を観に行くことは少なくなったけれど、借りたDVDの話や、何気ない日常の話でさえ、久しぶりに会ったら話は尽きない。 会話の流れの中には、涼太の話題も出る。 …といっても、私が勝手に話しているだけなんだけど。
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