…最終章 麻衣

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涼太の話題になる度に、自然と左手に光る指輪を見てしまう。 照明の光を反射してきらりと光る指輪を見る度に、あの時の涼太の言葉が浮かんで頬が緩んでいくのが自分でも分かる。 同時に思い出すのは、涼太が私を見つめる「愛おしそう」な表情。 3年前にお付き合いが始まったあの日から、いつも私に…私だけに向けられる表情がある。 それまでサークルにいたり、彩香先輩や濱野先輩と一緒に居る時には一度も見たことがない表情。 それを涼太に聞いてみたのはいつ頃だったのかな。 涼太が卒業して…呼び方が「涼太先輩」から「涼太」に変わってから、だった気がする。 「それは多分、麻衣のことを『愛おしい』『好きだ』って思ってる時の顔だと思う。」 ちょっと照れながらそう言った涼太に、私も照れつつ…でも、すごく嬉しかったことを覚えてる。 そんな風に、私だけに見せてくれる表情(かお)が増えるたびに。 この人のことが好きだなぁって、しみじみと実感してしまうんだ。
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