…第1章 麻衣と蓮太郎

30/31
150人が本棚に入れています
本棚に追加
/191ページ
「バーカ。」 そう言うのと同時に、おでこに衝撃。 「いったぁー!」 どうやら、デコピンをくらったらしい。 私の上からよけた蓮太郎は、 「目、覚めたか。」と、私の手を引っ張って起こした。 「覚めました…。」 「お前、今後男の家に一人で行くの禁止な。」 「はい。」 「男を自分の家に上げるのも禁止。友達何人かでならいいけど、男が何人でも、女は自分だけって状況は避けること。」 「はい。」 「特に酒飲んだ時は、絶対二人きりになるなよ。」 「はい。」 「自分が女だって、男には力で敵わないって自覚しろ。」 「はい。」 「自分から『泊まっていい?』なんて言ったら、ヤッてくださいって言ってるようなもんだからな。絶対言うなよ?」 「はいっ!」 「よし。分かったな。送ってくから、準備しろ。」 「はい。」 どうやら、蓮太郎は危機感のなさすぎる私に警告したらしい。 び、びっくりした。 男の人って、あんなに力が強いんだ。 押さえつけられた手は、ビクともしなかった。 …でも、嫌じゃなかった。 至近距離まで近づいた蓮太郎の目が、 耳元に感じた蓮太郎の吐息が、 大きな手が、私の身体に触れそうで触れなかったのが、 蓮太郎でよかった、なんて。 …蓮太郎には絶対に言えないけど。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!