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「驚かせて悪かった。でも、あのままヤッちまう男も本当にいるんだからな。」
「はい、以後気をつけます…。」
「お前、可愛いんだからさ。男に隙見せるな。」
「……!」
蓮太郎が、可愛いって言ってくれた。
恋愛感情はないって分かってる。
でも…嬉しかった。
「ほら。」
蓮太郎がハンガーに掛けていた私のパーカーを渡してくれた。
「ありがとう。」
パーカーを羽織って、バッグを持って部屋を出た。
眠気はすっかり覚めていた。
街灯だけが照らす暗闇は人通りもなく、隣を歩く蓮太郎の表情もよく分からない。
さっきのこと…私があまりにも無防備すぎて、蓮太郎は呆れちゃったのかな。
今日偶然会えて、蓮太郎のお宅に行って、楽しかった。
もうそういうのもダメなのかな?
なんか淋しいな。
でも…。
ふいに蓮太郎が話しかけてきた。
「さっき言ったこと、ちゃんと分かったか?」
「もちろんだよ!これからはちゃんと警戒心を持つから!さっきのがいい教訓になったし!」
「ならいい。今後はくれぐれも気をつけて。…またうちに遊びに来いよ。」
「……!また行ってもいいの?」
「だって、お前目に見えて落ち込んでるだろ(笑)」
蓮太郎には何でもお見通しみたい。
「あの…うちには遊びに来てくれる?ほら、今日急にお邪魔しちゃったし!もしよかったら、今度うちにも…と思ったんだけど。…これもダメかなぁ?」
「ダメだ。」
やっぱり。
「…って言うところだけど、いいよ。麻衣は来てほしいんだろ?」
「うん、ありがとう蓮太郎!」
「ったく。しょうがねえなぁ。」
そんなことを言っているけれど、蓮太郎の表情は優しい。
やっぱり、蓮太郎と一緒にいるのはとっても心地いい。
「あ、さっきの話だけど。もし、麻衣が本当に好きな奴ができた時は、ちゃんと付き合えることになるまで、って条件付きな。付き合う前に家に行ったり、自分の家に呼んだりするなよ?」
「はーい。」
蓮太郎はやっぱり優しくて、面倒見がいい。
その優しさが心地よい理由を、
さっきの警告で距離が近づいた時のドキドキを、
可愛いって言われて嬉しかったことを、
私は勘違いしていたんだ。
その本当の意味に気づいたのは、もっとずっと後のこと。
無事に家まで送ってもらった翌日。
【昨日買い物した荷物、忘れてるぞ。】
蓮太郎からのメッセージで、蓮太郎のお宅再訪問は早速翌日に叶ったのだった…。
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