…第1章 麻衣と蓮太郎

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「驚かせて悪かった。でも、あのままヤッちまう男も本当にいるんだからな。」 「はい、以後気をつけます…。」 「お前、可愛いんだからさ。男に隙見せるな。」 「……!」 蓮太郎が、可愛いって言ってくれた。 恋愛感情はないって分かってる。 でも…嬉しかった。 「ほら。」 蓮太郎がハンガーに掛けていた私のパーカーを渡してくれた。 「ありがとう。」 パーカーを羽織って、バッグを持って部屋を出た。 眠気はすっかり覚めていた。 街灯だけが照らす暗闇は人通りもなく、隣を歩く蓮太郎の表情もよく分からない。 さっきのこと…私があまりにも無防備すぎて、蓮太郎は呆れちゃったのかな。 今日偶然会えて、蓮太郎のお宅に行って、楽しかった。 もうそういうのもダメなのかな? なんか淋しいな。 でも…。 ふいに蓮太郎が話しかけてきた。 「さっき言ったこと、ちゃんと分かったか?」 「もちろんだよ!これからはちゃんと警戒心を持つから!さっきのがいい教訓になったし!」 「ならいい。今後はくれぐれも気をつけて。…またうちに遊びに来いよ。」 「……!また行ってもいいの?」 「だって、お前目に見えて落ち込んでるだろ(笑)」 蓮太郎には何でもお見通しみたい。 「あの…うちには遊びに来てくれる?ほら、今日急にお邪魔しちゃったし!もしよかったら、今度うちにも…と思ったんだけど。…これもダメかなぁ?」 「ダメだ。」 やっぱり。 「…って言うところだけど、いいよ。麻衣は来てほしいんだろ?」 「うん、ありがとう蓮太郎!」 「ったく。しょうがねえなぁ。」 そんなことを言っているけれど、蓮太郎の表情は優しい。 やっぱり、蓮太郎と一緒にいるのはとっても心地いい。 「あ、さっきの話だけど。もし、麻衣が本当に好きな奴ができた時は、ちゃんと付き合えることになるまで、って条件付きな。付き合う前に家に行ったり、自分の家に呼んだりするなよ?」 「はーい。」 蓮太郎はやっぱり優しくて、面倒見がいい。 その優しさが心地よい理由を、 さっきの警告で距離が近づいた時のドキドキを、 可愛いって言われて嬉しかったことを、 私は勘違いしていたんだ。 その本当の意味に気づいたのは、もっとずっと後のこと。 無事に家まで送ってもらった翌日。 【昨日買い物した荷物、忘れてるぞ。】 蓮太郎からのメッセージで、蓮太郎のお宅再訪問は早速翌日に叶ったのだった…。
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