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『…………』
いくつもの悲鳴が上がる、駅のホーム。
大騒ぎする人々の中に、たった一人静かに佇むばかりの女の姿があった。
冬にも関わらず夏物の白いワンピースを着てつばの広い帽子を目深に被ったその女は。異様な風体にも関わらず、誰にも注目されることなく、一人そこに立ち続けている。
『……愛しているわ…』
女の、紫色の唇が動く様を――見たものはいただろうか。
『愛しているわ。いつか必ず、液晶を越えて…貴方に会いに行ってみせる。邪魔なものは、全部…排除して見せるから…』
その唇が、異様な高さまでつり上がる様に。
気づいた者は――誰も、いない。
『次の器では、必ず…必ずよ……蓮馬』
歪な恋は終わらない。
そのループはけして――途切れることを、知らない。
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