<第四話>

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 唾液に濡れた画面を拭うこともせず、真由は恍惚とした表情で指を動かした。『戦え、絶唱アイドル!』では、入手したアイドルを育てる方法がいくつもある。一つは特別な訓練を施すシステム。時間経過で回復するポイントを消化していくと、様々な特訓を施して入手したキャラクターの能力を強化していくことができるのだ。  また、多くの合同練習やステージに参加することにより経験値を得ることができ、そうすることで全体的にステータスアップを図ることもできる。どのステータスも切り捨てることの難しい重要な要素だ。見た目のコンディション、衣装のオシャレ度、歌唱力、ダンス力、連携力、パフォーマンス力、総合魔力――一流の歌唱魔法を使えるアイドルを目指すなら、どのステータスも最高まで上げてあげたいところである。  SSランクの蓮馬は最終的には非常に優秀なステータスを誇るアイドルに成長してくれる、とWikiには書いてあった。ただし、高ランクのキャラクターは総じてレベルアップに必要な経験値が低ランクのキャラクターより多い。また、特にこれは蓮馬の場合顕著なのだが、彼は経験値によるレベルアップでの成長率が完全に大器晩成型である。高いレベルになればなるほど、1レベルごとに上がるステータスの値が高くなってくる。つまり、低レベル時はなかなかステータスがアップしていかないのだ。 ――少しでも早くレベリングして、少しでも早く彼を誰にも負けない最強のアイドルにして、ラスボスを倒させてあげるのよ…!それがプロデューサーであり、恋人であるあたしの役目なんだから…!!  ひたすらレベリング、レベリング。ポイントが回復しては特訓特訓。だが、特訓に使えるポイントの回復速度は非常に遅い。最大で20ゲージ、1ゲージ回復するのに十分もかかるなんて有り得ない。一つの特訓をするのに2ゲージは必要なのだ。そんなの待ってはいられない。  とりあえず、特訓ポイントを回復させられるアイテムを再度購入することにする。――課金しすぎじゃないのか、みたいな警告文が出たが完全に無視だ。確かまだ貯金はあったはず。口座から直接引き落とされる金にはまだ余裕があったはず。なんとか足りるだろう、多分。
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