<第五話>

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 人が人を愛する気持ちに、制約はない。  いや、それこそ相手が人間ではなく、それ以外のイキモノや存在であったとしても――恋をするだけならば、誰だって自由だ。たとえ法律で禁止されようと、婚約が認められなかろうと、人の心を縛れるものなど存在しない。少なくとも、人類の一般常識においては、人が人の心を洗脳し操る術は殆どないとされていることだろう。  誰かを愛する気持ちは貴いものだ。  人は誰かを愛し、愛されるために産まれてくる。愛することも愛されることも、多くの場合は互いに大きな幸福を産む行為であることだろう。  ただし。 『大好き…大好きよあなた。愛してるわ。世界の何よりもあなたを愛してるの。この気持ちがあなたに届いていない筈がないわ。あなたも私と同じ気持ちに違いないわ。…だからお願い、気づいて。恥ずかしがらずに私に手を差しのべて。私を愛して、私を裏切らないで……私を、早く、抱き締めて?』  忘れてはいけない。  片想いは一人で出来ても――両想いは、一人では出来ないということを。  本当に互いの気持ちがそれぞれに向いていなければ、常識的な恋人関係は成立しないということを。  その想いが――思い込みや妄想ではあってはならないということ。
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