<第五話>

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「ふざけないでっ!あたしが…あたしが蓮馬のストーカーですって!?」  激怒して、怒りのまま拳を叩きつけた。机の上に乗っていた雑誌も、飲みかけのコーヒーが入ったカップもみんなひっくり返って床を汚したが、そんなものを気にしている余裕など既に真由にはなかった。  怒り――否。憎悪に近い感情が溢れて止まらなくなっていた。自分は正しいことをしている。正しいことを言っている。それなのに、こいつらは何を訳のわからないことを言っているのだ。 「あたしと蓮馬は本気で愛し合ってるの!キスだって交わした仲よ…!本当は今すぐにでも抱き合って、いっぱいベッドで愛し合いたいのに液晶が邪魔してそれができないだけなの!蓮馬もあたしのことを世界で一番、世界で唯一愛してくれてる!何度もそう言ってくれてるのがあんた達にはきこえないの!?耳がおかしいの!?頭イカレてるのは誰よ、蓮馬に浮気を強要させようとしてるあんた達の方がどうかしてるじゃないっ!!」  そうか、と唐突に理解する。  こいつらも、真由の障害なのだ。真由と蓮馬の仲を引き裂こうとする障害。恋の試練。蓮馬があまりにも素晴らしい存在だから、蓮馬を取られたと思って真由に嫉妬しているのである。本当は自分だけの蓮馬にしたいと思ってる、独占欲丸出しの気持ち悪い連中のくせに。真由が妬ましいから、浮気を肯定して別のカノジョを応援しているフリをしているだけだ。イイコちゃんぶって、高槻先生の間違った漫画を応援しているフリをしているだけなのだ! 「ああ、落ち着いて。落ち着くのよ真由。そうよね、こいつら有象無象、みーんなあたしに嫉妬しているのよね。わかるわ、あたし達があんまりにも魅力的で最高のカップルだから妬ましいのよね。蓮馬に愛されているあたしが羨ましくて、隙あらば奪いたいと躍起になってるだけよね…うふふ、うふふふ。残念ね、悪いけど蓮馬はあたし以外の女なんか絶対眼に入らないの…!あんた達の薄汚い欲望なんかが、優しくて清らかなあたしの蓮馬に届くはずがないんだわ…。そうよそうよ、焦る必要なんかないのよね…」  ぶつぶつと呟けば、心は段々と穏やかなものに変わっていく。  そうだ、嫉妬に狂ったメスブタどもの炎上行為なんて気にする必要がない。傷つく意味も耳を貸す理由もない。だって真由がクズどもの声なんかで傷ついたら、間違いなく蓮馬を悲しませてしまうに決まっているのだから。
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