<第五話>

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 大切なことは一つ。高槻先生に、榊蓮馬の正義を伝えて、本当のカノジョと愛し合う話に差し替えて貰うことだけだ。なかなか返信が来ないのは馬鹿どものレスに真由の大切なメッセージが埋もれてしまったせいかもしれない。真由はもう一度返信しようとコメントを書き、ボタンを押して――。 「……え?」  何かがおかしい。うまくツイートが反映されない。真由はページを更新してみて、そして――。 『ブロックされているため、@takathuki1937さんをフォローしたり、 @takathuki1937さんのツイートを見ることができません』 「なんでよっ!?なんでブロックされてるの!?あたしは正しいことを教えてあげただけじゃないのっ!!」  今度こそ、自分で自分の感情を抑え込むことができなかった。  公式漫画の作者にまで裏切られるとはどういうことだ。真由はただ、本当の彼女が存在することを伝えただけだ。優しくて清らかな蓮馬に、浮気なんて酷い真似をさせてはいけないと諭してあげただけだはないか。キャラクターのイメージを守ること、それをよりにもよって公式関係者が破っていいはずがないのである。  それなのに。正しい指摘をしてあげただけで、たった一度返信しただけで――何故ブロックまでされないといけないのだ?高槻のツイートも全部表示されなくなってしまった。そのくせ、自分への叩きコメントばかりがひっきりなしに送られてくる始末である。  こんな理不尽が罷り通っていいはずがない。  こんな酷い話があっていいはずがない。  自分は正しい。何も間違ってなんかない。狂っているのは世界の方だ。蓮馬と真由の恋を認めようとしない――この社会そのものが歪みきっているのだ! 「こうなったら、直接高槻先生に会いに行って直談判するしかないわ!蓮馬の彼女は、あたしは実在してるってわかれば…高槻先生だってきっとブロックしたことを後悔して、蓮馬に酷いことなんかもうさせないって約束してくれるはずよ!!」  高槻先生へのファンレターの送り先住所は、公式ホームページに書いてあった。きっとそこに行けば高槻先生に会いに行くことができるだろう。善は急げ、悪女と浮気紛いのことをさせられてしまうかわいそうな蓮馬が世に出てしまう前に、一刻も早く手を打たなければなるまい。
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