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そうこれは、試練。
蓮馬との恋をゴールさせるために神様が用意した大いなる試練なのだ。自分は今、蓮馬への気持ちが本当であるかどうかを試されているのである!
「蓮馬、ああ蓮馬…待っていて!今からあたしが貴方を助けに行くわ…!貴方の運命の恋人である、このあたしが!!」
『そうよ、行くのよ。邪魔なものは全て排除しなきゃ。狂った歴史はみんな正しく修正しなきゃ』
「今から行くわ…蓮馬、蓮馬、蓮馬ぁ!!」
頭の中に響くその声が、自分のものなのか別の誰かのものなのかはもはやわからなくなっていた。そのままの足で、真由は家を飛び出していく。走り出してしばらくして自分が裸足であることに気がついたが、気にする気にもならなかった。家で着るぼろぼろのジャージ姿であることも途中で思い出したし、携帯以外に何も持っていないことも思い出したが、足を止めようとは思えなかった。
陸地は全て繋がっている。電車で数駅、大した距離でもなんでもない。
「こんなに速く走れたの初めてっ…これが愛の力なのね蓮馬っ…!!」
誰かが呼んでいる。叫んでいる。
駅前で蠢く人々を突飛ばし、蹴り飛ばし、改札を突破してどこまでもどこまでも前へ、前へ、前へ――!
そして。
「間もなく列車が参ります。白線の内側までお下がりください――」
その駅に、ホームドアは設置されていなかった。
線路に飛び込んだ次の瞬間、真由の肉付きのいい身体は紙のように吹き飛び――めきょり、と酷い音がした。
「あべっ…」
最期に真由が見たのは、千切れ飛ぶ自分の手足、真っ赤に崩れ落ちてすぐに闇に染まる視界。
激痛に絶叫するよりも先に――全ては閉ざされて、何も見えなくなっていったのである。
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