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「水谷さまのご婚約者相川さまは、お目が高いです。
ウェディングというと女性が中心で、男性は添え物のようなイメージがありますが、相川さまが目をお留めになったこのプランは、新郎が現地の男性に混じって戦いの儀式を踊り、勇者として花嫁を迎える結婚式です。
参列されるご親戚や、ご友人の皆さまにも、掛け声や打楽器を使って頂き、勇者の踊りを盛り上げる参加型のウェディングなので、ご結婚される水谷さま、相川さまとご一緒に、思い出に残るお式をあげることができると思います」
さっさと決めてくれないかなとでもいうようにイラついていた男性客水谷は、自分も主役になれると聞くや否や、婚約者の横から熱心にパンフレットを覗き込み、もはやこれ以上心躍るプランはないというように、相川を口説きにかかった。
この調子で落とされたんだなと、望は内心おかしく思いながら、それでも正々堂々と結婚できる目の前のカップルが羨ましかった。
(どんなにいいと思う男性がいても、私にはこんな日がくるのは想像できないな。今までだって失恋ばかりで、もう期待する気持ちにもなれない‥‥‥。目の前のカップルみたいに身長差があれば、かわいいかっこをしても似合うし、ヒール履いても大丈夫だろうけど……)
望は自分の百七十cmもある身長と、少年にも見える中性的な容姿を思い浮かべてため息をつきそうになった。
女っぽい仕草を心掛けてみたこともあるけれど、やだ~オカマみたいとからかわれて、やっぱり? なんて冗談で返しながら、何気に傷ついて、後で落ち込んだんだこともある。
それ以来、サバサバ女子を目指し、言葉も語尾を伸ばして媚びることもせず、さっぱり、さくっと話すのが板についた。
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