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その間に、望の2つ上の先輩社員の村上厚司が、佐久間の向かいで、望の左横の席に腰かける。いかにも草食系の村上は、普段から男を感じさせないのだが、佐久間と並ぶと余計に存在感が薄くなる。望には兄のように接してくるが、失敗するとなかなか浮上できない村上をフォローするのは、いつも望の役目で、どっちが年上なんだかと溜息をつく時もあった。
こんな風に佐久間と村上を比べてしまうということは、当然男性側からも、望と女の子の憧れを具現化したような美麗を見比べているだろうことを、望は容易に察することができた。
百五十七cmの女の子として高すぎない身長や、ポメラニアンのようなふんわりとしたかわいい表情や仕草も、望ができることなら変わってほしいと願うものばかりで美麗はできている。
現に、今まで望が好きになった男性は、最初は親しく打ち解けても、すぐに美麗の魅力にまいってしまって、望を相手にしなくなるのだ。
いやもとい、男仲間として相談役に引き立てるようになるのだ。
あ~あ。今も美麗が悩殺ものの笑顔を佐久間に向けていると、望はため息がでそうになった。
にっこりと笑った瞬間に、美人からかわいく変貌する顔を見て、今まで望が好きな男性が目を見張るのを嫌というほど見てきた。
こりゃだめだ。佐久間も完全に 落ちるだろうと思った途端、望はそれを見たくなくて、視線をテーブルの上に落とした。
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