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「う~ん、もうちょいで、殻から抜け出した望ちゃんを見られそうだったのにな……残念だ。ちょっとそのままでいてくれ」
傍らのテーブルにあったスケッチブックを手に、猛がサラサラと何かを描き始める。真剣に望を見つめたかと思うと、次の瞬間には望を通り抜けて遠い所を見ているような顔をする。
「おい、デザインをするのに、俺たちをからかったのか?」
志貴は知られたくないことを、望の前で暴かれたので機嫌が悪い。
やりたいだけやって、自分の世界にこもった猛に、文句の一つや二つも言いたくもなる。
「望ちゃんにぴったりのドレスはどんなものがいいか、色々な角度から見たいんだ。感情もオープンにした生き生きとした望ちゃんを表現したい。
でなければ、その辺のトルソーにでも着せておけばいい布になっちまう」
猛の言った人の胴体部分だけを模ったディスプレイツールに目をやった望は、鏡に映った自分と見比べて、果たして猛の要求に応えられるかどうか不安になってきた。
「あの、今井さんが言いたいことは分かるんですが、どうして垢ぬけない私をモデルにしたいなんて思ったんですか?」
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