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「今井さんの言葉は嬉しいです。でも今がモテ顔だからって、今まで男女とか言われてフラれ続けた記憶は残ってるから、そう簡単に自信を持てと言われても難しいです。
でも、今井さんの服は好きだから、私のためにデザインして下さるドレスが似合うように、当日は頑張って演技します」
仕方ないなと溜息をついて肩をすくめた猛が、壁際に置いてあった机の引き出しから、写真立てを引っ張り出して机の上に立てかけたので、望はそこに写っている少年に目を留めた。
もっさりした髪に黒縁眼鏡、歯並びの悪い少年は、いかにも自信がなさそうに立っている。
「これ、俺だから」
「ええっ!?」
望だけでなく、美麗も、志貴も目をまるくして、写真と成長した今のスタイリッシュな猛をまじまじと見比べる。
「顔って、変化するって知ってた?もちろん原型は変わらないかもしれないけれど、気持ちが顔を作っていく。
今の俺だって決してパーツ全部が良いわけじゃない。でも、歯の矯正もしたし、眼鏡からコンタクトにして、顔かたちに似合う髪型を研究して努力もした。
仕上がりに強い意志を持てば、顔だけでなく態度までこの写真の人物とは違って見えるだろ?」
「ええ、びっくりしました。正直言って、聞いた今でも、写真の人が今井さんだとは思えません」
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