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縁結びの島
翌日の朝9時に、4人は会社の最寄り駅から1時間ほどの結実島を見下ろす駅にやってきた。
利便性を知るために、望と美麗は電車で、村上は私鉄からバスに乗り換えて、佐久間は車でと、それぞれが交通手段を変えて、実際の走行時間や乗り継ぎのスムースさを確かめた。
「車だとインターが少し遠くて不便だな。山道を抜けるための細くて入り組んだ道が続くから、あまりお薦めはできない。まぁ、カップルで来るならドライブにはなるだろうけど...」
仕事の時はきっちりと撫でつけた髪をふわりとナチュラルに流した佐久間は、ペールグレーのカットソーの上にオフホワイトのジャケットを羽織り、ボトムはブラックのチノパンを穿いていて、まるでファッション雑誌から抜け出してきたモデルのようだった。
昨日は複雑な気分だった望も、今朝は気分を切り替え、私は私、美麗は美麗、恋愛気分は置いておいて、イベントの下見に精を出そうと決めた。
そう決めたはずだった。でも、目の前に普段着の佐久間が現れた途端、もろくもその決意は崩れ去り、磁石に吸い付けられるように目が佐久間から離れなくなる。
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