デザイナーズドレス

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 残っていたクラッカーの欠片を口の中に押し込んで、望はジャムとクリームチーズでべとついた指を拭おうとして、テーブルに置いてあるティッシュに手を伸ばしたが、横からすっと大きな手が伸びてきて、望の細い手首を掴み、あっと思った時には、望の指は志貴の唇に押し当てられていた。  望の全ての感覚が指先に集まり、視野も狭くなって、志貴の唇に集中する。  唇が上下に開いたかと思うと、指を柔らかく()まれた。 「あっ…」  望は自分の声にはっとして、温かな唇で挟まれた指を抜こうとしたが、手首を掴 んだ手は緩まない。それどころか、火傷をしそうなほど熱い感覚が指先を掠めた。  
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