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望のためらいを感じ取って、志貴が真剣な顔で問う。違う!と望は大きくかぶりを振った。
「志貴さんに抱かれるのが嫌なんじゃない。ただ、今まで憧れすぎて、好きすぎて、気持ちがついていかないの」
突然唇を塞がれて、望は混乱した。柔らかに望の唇を揉みこんでいたキスは、角度を変えて深く密着し、互いの熱を分け合う。口内に遠慮なく侵入してきた舌が、望の上あごから喉に向かって摩ると、そこから疼きが生まれ望の息が上がっていく。絡めた舌は甘かった。
「俺を見て。理想化しないで、ただの男として俺を見て、望にこんなにも夢中になっているのを知ってくれ」
望の手を取って、志貴は自分の心臓に押し当てる。
早く脈打つ心臓は志貴の興奮を物語っていて、口先だけでなく、本当に自分を欲しがってくれているのが分かり、志貴を生身の男として実感する。
志貴の本気を感じた望は、気がかりだったことを口にした。
「あの…ビスチェでボディーラインがきれいに見えるけど、私の胸はそんなに大きくないからがっかりしませんか?」
「しない。スレンダーな方が好きだ。他に、気になることは?」
「だって、早紀さんは小柄で胸も大きかったから、ああいう人がタイプなんだと……」
望の自信の無さは本当に奈落よりも深いんだと、志貴は今更ながらに悟った。
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