デザイナーズドレス

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 緊張をはらんだ空気に、望の呼吸が浅くなるのを見て、志貴は望を怯えさせないように気を使いながら、自分の腕と脚でゆっくりと望の身体を囲い込んだ。  その間、ずっと視線を外さずに見つめ合う表情は、お互いに何一つ見逃すまいとして、一戦を交える前に間合いを取っている者同士のように張り詰めていた。  狩る側と、狩られる側との違いはあるけれど、お互いにその瞬間を待ち望んでいることが、見つめ合う瞳に映った欲望で感じられる。  志貴が大きな手で望の頬を包み込み、優しく撫でながら唇を覆った。  何度も交わされた口付けは、望を慣れさせ、従順に従うのを見計らって翻弄し、自分から求めるように仕向けるための導火線になる。期待と怯えが入り混じった望に火が付いた時、志貴は自分を抑えられるだろうかと不安を抱いた。  その気持ちから目を逸らし、ただ、今は望を開花させたくて、激しくなる口付けの合間に、背中に手を回し、ビスチェのホックを外していく。  圧迫から解放された望が、志貴の仕業に気が付いた時には、ビスチェはもうカットソーの下から引っ張り出されていた。  
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