デザイナーズドレス

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 アトリエ【Take.I】では、猛がデッサンを元に、トルソーに巻き付けたミカドシルクにピンを刺していた。  10日前に知った望たち3人の関係や気持ちを、自分なりに何とか作品にしたくて、デザイナー仲間や姉の婚約者たちに頼んで、ウェディングドレスの処分品と、シルクの中では最高級のミカドシルクの生地を手にいれてもらった。  トルソーに巻き付けたのは、ミカドシルクで作られたウェディングドレスを解体したもので、猛の思い描く形や、変化が望めるものかどうかを試していた。  中性的で、何にも染まっていないクリアな印象と、ともすると硬さを感じさせる美しさを持つ望に、レースが一杯のフリフリドレスを着せれば、引き立つどころか、本人もドレスも良さを相殺してしまう恐れがある。  猛はウェディングドレスの専門店を訪ね、特集記事に目を通し、仲間のつてをたどってドレスのデザイナーに会い、作り方を見学させてもらったりもした。そして、どんな素材でどんなシェープが望に合うのかを考えた。  生地がしっかりとして、光沢があり、上品なミカドシルクは望の美しさをこの上なく輝かせてくれるはずだと、猛はパタンナーに頼らず、仕事が終わった空き時間を利用して、こうして試作品を作っている。
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