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「違うんです。今日お伺いしたのは、内緒で美麗のドレスも頼めないかとお願いしに来ました。今井さんが忙しいのも、これがどんなに図々しいお願いかもわかっています。でも、何とかお願いできないかと思って直接来てしまいました」
真剣に語る望を見ているうちに、猛はふと違和感を感じて、何気なしに望に手を伸ばすと、望は触れられる前に退いて、気まずそうに眼を泳がせた。
「ああ、なるほど・・・。望ちゃんはついに食われちまったか」
「えっ?何を言って・・・」
首を傾げた望が、直後に意味を理解して、その頬を真っ赤に染めると、猛は意地の悪い笑みを浮かべながら、どうして分かったか問いたげな望に説明をしてやった。
「俺の経験から言うと、男を知らない、または興味のない一般の女は、触れられることに鈍感だ。触れられそうになっただけで避けるのは、相手が嫌いか、男を知っていて無意識に身体に起きる変化や感情を避けるためだ。俺は望ちゃんに再三アプローチしてるから、男として意識したんだろ?」
猛が顔を覗き込もうとするので、望は一歩下がろうとしたが、すぐ後ろのカウンターに行く手を阻まれ、それ以上後ろが無いことを知る。
どきどきと心臓がうるさく鳴り始めたが、望は猛の常識に訴えることでかわそうとした。
「意識なんてしてません。私が意識するのは恋人の志貴さんだけですから」
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