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それは…と言いかけて望の視線が揺らぐ。もしプロポーズされたなら、自分は間違いなく志貴を取るだろう。幸せの象徴であるウェディングドレス姿を、美麗に見せつけることになる。
美麗にとっては、それだけでも辛いだろに、本当は望のために着たいであろうウェディングドレスを、期待しても無理だと知っていながら美麗に着せて、その横に自分は志貴の為にと願うドレス姿で立って、空々しい幸せをごっこを演じようとしたのだ。
その愚かさに気が付き、望は頭を殴られたかのようにショックを受けた。
美麗の為にと熱く語った望の表情が崩れ、苦悩に歪むのを間近で観察していた猛が、現実を見せた効果が行き届いたかどうかを確かめようと探りを入れる。
「まぁ、案としては悪くない。俺もデザインしながら決め手に欠けて困っていたんだが、今ので面白いことを思いついた。ただ、望ちゃんが俺の条件を受けいてくれればの話だが……そうしたら必ず実現させる」
どう?とさらに覆いかぶさるようにして畳みかけたので、すでに反っていた望の身体はバランスを失い、後ろに倒れた。猛がその腰を掴まえて抱き寄せると、望が首を振るのにも関わらず、片手で顎を固定して、望の唇を奪った。
折りたたまれた腕で何とか押し返そうとするが、男の力には敵わず、さらに強い力で抱き込まれてしまう。望は拳を作って、猛の胸や肩を叩いたが、至近距離ではさほど威力もなく、ダメージを与えることができない。
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