縁結びの島

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「別に言うほど混乱はないと思います。思いあった二人が結ばれるだけで、当て馬にされた者が自分の馬鹿さ加減を嘆くだけに終わるんじゃないですか?」  一瞬見せた動揺はすぐに消え、佐久間らしくもないぶっきらぼうな物の言い方に、望だけでなく、美麗も、村上も、はっとして佐久間の顔を見たが、まるで感情を押し殺したような冷たい表情に驚き、全員がすぐに目を逸らした。  その答えを聞いて考え深げに頷いた孝登は、この4人の中にカップルはいるかどうか確認をしてから話を進めた。 「昔、この辺りの結婚が決まった女性は、身を清めるために、この山の中腹にある参籠所(さんろうじょ)で一晩を明かし、迎えに来た男性と山頂を目指して鳥居をくぐって、夫婦になる資格を得たと言い伝えられます」  望も美麗も女性だけが身を清めるのはおかしいよねと囁きあい、女性蔑視にも繋がる風習に眉をひそめた。   ここで昔のことに文句を言っても仕方がないので、一応口をつぐもうとしたが、望はどうしても気になったことを聞かずにはいられなくなり、孝登に質問をした。 「その風習は今でも残っているんですか?たった一人で山の中で夜を明かすのって怖いし、寂しいし、危険じゃないですか?」
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