縁結びの島

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「参籠所は何部屋かあるので、昔は巫女や警備の者が別室に泊まって、花嫁候補を守りました。  今は結実神社で結婚式を挙げる際、儀式の一環として、普段着姿の花嫁が形だけの短時間を参籠所で過ごし、迎えに来た花婿と一緒に山頂を目指して頂きます。  鳥居をくぐることで結婚の意思が認められ、参集殿で着替えをして頂き、結婚式に至ります。  その山中のルートは結構急な自然道なので、申請があったときだけ開放していて、普段は山肌沿いをぐるりと緩やかに登る遊歩道を通って参拝して頂いております」  孝登が説明し終えると、それまで黙っていた美麗が突然口を開いた。 「私、その花嫁の儀式を体験してみたいです。遊歩道は男性たちに見て回ってもらって、望も私と一緒に参籠所を見せてもらわない?」 「えっ?でも、このイベントの提案者は私だし、実際のルートを見てみないといけないんじゃない?」 「イベントのだいたいの仕掛けは二人で考えたんだから、佐久間リーダーたちに、それが可能か確認してもらえば、今日のところはオッケーでしょ?男性の足なら1時間もかからないだろうし、見終えたら山頂から自然のルートを下って、合流してもらえばいいじゃない」  ね?行こうよと望の腕を引っ張って、かわいくおねだりする美麗には、いつも望は逆らえない。  いいな~。私が同じことをしたら、かわいいどころか、大きな図体をしたガキ大将が、玩具をねだっているようにしか見えないだろうなと、望は羨ましさを覚えると共に、美麗のかわいさに口元をゆるめた。  二人の様子を見ていた佐久間も仕方ないなと笑って、別行動が決まった。
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