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「分かりました。では今日は特別にお二人を参籠所にご案内しましょう。
本殿に宮司の早瀬が待機しておりますので、男性は遊歩道を先に進んでいってください。女性は一人ずつ儀式の前に質問があります。
まずは和倉さん、私と一緒に橋を渡りましょう。美麗さんは手招いたら、渡ってきてください」
橋を渡りながら望はどんなことを聞かれるのかと気が気ではなかった。あまりにも落ち着かないので孝登の顔を覗き込んで自分から質問をした。
「あの・・。ひょっとして男性経験の有無とか聞かれるのでしょうか?」
足を止め孝登がきょとんとして望を見つめ、意味が分かった拍子に身をよじって笑い出した。
「まさか!今時潔白かどうかなんて、そんなことを気にする人はいませんよ。和倉さんは面白い方ですね。私が聞きたいのは、本当に好きな方の名前です。別に嘘をついても構いませんが、その嘘を神がお聞きになった場合、ひょっとしたらその相手との縁を結ばれてしまうかもしれません」
歩を進めながら、にやりと笑う孝登の顔を見て、望は美麗のいる陸地へと引き返したくなった。
「そ・それは、怖いですね。体験でも嘘の名前を言ったら、神が覚えているかもしれないんですね」
「今は流れを説明させて頂いていますので、あまり深く考えないでください。それに聞いたところで私の知らない方でしょうし、個人情報の漏洩はしません。では、好きな方の名前をどうぞ」
「……」
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