プロローグ ウェディングプランナー 

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 そして万が一、他所の海外ウェディングを扱う店で説明を受けたとしても、こちらを選んでもらえるように、他社とのサービス比較で勝る点やオプショナルなども説明し終え、満足気に出ていく二人を笑顔で見送った。  一面をガラスで覆われた店内から空を見ると、今にも雨が降り出しそうだった。  昼食まであと十五分。今日は予約以外の客の来店は見込めないかもしれないと思いながら、午前中の予定を終えた望は、接客カウンターを片付けた。  ドレスやタキシードが展示してあるロビーに乱れがないか確認すると、狭い廊下を通ってバックにある事務所に入り、手配書をかごに入れる。  その先は事務職の仕事で、申込書に従って顧客データーをパソコンに入力し、必要な手配や連絡を行う。  望の幼馴染で同期の山岸美麗が、さっそく申込書に目を通して、望に笑顔を向けた。 「さすが望!また二十名以上の団体ゲットだね。今月の集客数トップの佐久間リーダーに並びそう」  佐久間の名前を聞いた途端、トクンと跳ねた心臓を落ち着かせながら、望は口元に人差し指をあて首を振り、美麗をけん制する。  海外ウェディングというと、美しく、ゴージャスで幸せ満載のイメージだが、内情は似たり寄ったりのプランが渦巻く業界の中、手八丁口八丁で、どれだけお客を自分の会社の商品に誘導するかが勝負だ。  
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