プロローグ ウェディングプランナー 

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 旅行会社に申し込むハネムーンは新郎新婦の2名だが、海外挙式となると親族を連れて行くので団体客になり、一気に集客が見込める。  他社とのしのぎを削るため、社員一人当たりの月間のノルマは結構きつく、当然、ガンガン攻めるプランナーが多くなる。  それに反するようにクールに整った中性的な顔立ちや、品の良い佇まいを裏切って、時々繰り出される男性的な突っ込みや仕草、そして何よりも、相手を観察してぴったりのプランを勧めてくれる望は、相談客にインパクトを与えて惹きつけるらしく、プランの内容も手伝って、相談後の申し込み率が高かった。  毎週発表される集客数の上位は、いつも佐久間志貴と和倉望の名前が占めるので、まだ入社して2年目の望は、ともするとやっかみの対象になった。  時々先輩たちに、中性的な顔のいい人って得だよね。婚約女性の嫉妬も買わないしと嫌味を言われることもある。 だが、特に自分の外見に自信があるわけでもなく、本当は女性らしさに憧れを持つ望は、自分のコンプレックスを暴露するような返答はせず、仕事の成果で仕返しをした。  要らぬ刺激はしないようにと、一応美麗の軽口を仕草で止めて、望はカウンターへと戻っていった。       
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