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過去との対峙
くねくねと曲がる山道も、カーブでのスローイン、ファーストアウトをスムースにこなす佐久間の上手な運転で、酔うことも、足を踏ん張ることもなく走り抜けて高速に乗った。
ツーシーターの車はゆとりがあるとは言えず、すぐ横で運転する佐久間の仕草が気になって、見つめてしまいそうになる。望は意識しないように、窓から流れていく景色に目をやった。
でも、二人乗りの車に乗るくらいなら、彼女がいるんじゃないだろうかと考えていたら、佐久間に突然話しかけられ、望は我に返った。
「もう1時になるな。あと10分くらいで、インターを出るけれど、和倉は何か食べたいものはあるか?」
「いえ、足がこんなんなので、畳に座るのでなければ、佐久間リーダーのお好きなものにしてください。あの、ところで、ここはどこですか?」
「隣の県だよ。俺の兄の診療所があるから、和倉の足を診てもらおうと思って電話をしておいた。あの神社の近くの病院はあいにく休診日で誰もいなかったし、それなら車で30分でいける兄のところの方が安心かと思ったんだ」
安心といいながら、佐久間の顔がにこりともしないのが気にかかり、望は恐る恐る佐久間の兄のことを尋ねた。
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