それは絶妙なタイミングでありまして。

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「それに。」 新藤が少し俺に近づいてきた。 そうだ、説明を忘れていた。俺と新藤は席が後ろと前だ。 さっき話したあるきっかけというのは、初めて話して三日後に行われた席替えのことだ。 俺が後ろで、新藤が前。俺はいつも授業中、8割は新藤の後頭部を食い入るように見ている。 そして、いつの間にかこう考えるようになっていた。 俺の目線が新藤の脳裏に刺激を送って、俺のことを好きにな… 「え?」 俺の脳裏に何か良からぬことが、俺の頭の中はもしかしてそんな… 「どした?」 「いや、何でも。」 自分の脳裏に浮かんだ良からぬ妄想と、自分のはっとした気持ちを表した言葉が口から出てしまっていた事実に、俺は困惑し、ひどく動揺した。 そして、その後に最大の爆弾が、新藤の口から俺にゆっくりと投下された。 「川原彼女いるでしょ?」 ごめんな、新藤。 それは。 違う。 違うんだな。 「いないけど。」 「いや、いいって。別にそんな詮索とかはしないし。そこまでお前に興味もないし。」 新藤が俺の気持ちをえぐる言い方をしてきたのは、もしかしたらこれが初めてかもしれない。 そうか。 新藤は、俺に興味ないんだ。 俺が少し目線を机に向けようとした瞬間、外に目を向けていた新藤の目線が、ふとこちらに戻った。 そして目をきょろきょろさせてから、新藤は言葉を重ね出した。
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