それは予期せぬタイミングでありまして。

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「はいはい。じゃあ、また友達に戻るってことで。はい、じゃあね。」 新藤と俺が知り合ったのは高校2年の時。 同じクラスになって、たまたま放課後に彼女であろう女子と別れ話のような会話をしている時に、 偶然教室に入ってしまった。 その時初めて、俺は新藤と会話をした。 「川原だっけ?」 「え?あ、うん。」 俺は自分の席に座って忘れていた教科書を探し始めた。 窓際にいた新藤が俺の前の席にゆっくりと座りながら、俺の行動を見ていた。 いや、見ている気がした。何となく新藤の視線を感じたからだ。 「何かごめんね。」 「何が?」 「いや、何か入ってきにくい感じだったでしょ?泣いてたし。」 彼女、いや、元カノになってしまったその子は、隣のクラスの確かテニス部で県大会に行った子だったような。 「モテるやつって大変だな。」 「全然。千華は、あ、あの子千華っていうんだけど、あいつ幼馴染なんだよ。それでね。」 “それでね。” これはもう、何も聞くなという暗黙のサインなのだろうか。 「俺彼女とかいないからわかんないな。」 「川原モテてるじゃん。前に女子が話してたよ。サッカー部で唯一チャラチャラしてないのは川原君だって。」 「別にサッカー部はチャラチャラしてないんだけどな。」 それに明らかに他のやつの方がモテる比率が半端じゃない。 バレンタインデーなんて正直練習どころじゃない。隙あれば、チョコ渡しの呼び出しの列が作られるほどだ。 そこまで成績も良くないのに、何故かもてはやされているのがうちのサッカー部。 それはきっと、サッカー部のほとんどが頭が良く、容姿、性格、その他もろもろのスペックの高いやつらが集まっているからだ。 部活は明らかに勉強でのストレスを発散させるための道具と化している。 ちなみに俺は、普通にサッカーが好きで、成績も数学だけ得意なDFです。そこまで顔もかっこ良くない。 でも睫毛は長いと言われることはある。
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