それは予期せぬタイミングでありまして。

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「川原、あ、川原って呼んでいい?ごめんな、いつもこっちでは呼び捨てで呼んでるんだ。」 こっち、とは? 「あ、別にいいよ、何でも。」 「俺も呼び捨てでいいよ。新藤でいいよ。」 「うん、じゃあそうする。」 放課後の教室に、夕日の光がそっと差し込む。オレンジ色が二人の髪の毛を茶色に染める。 「眩しいな。」 「そうだな。」 少しだけ、新藤がこっちを見る。 俺も、新藤を見る。 「何。」 「いや、何でも。」 「言えよ。」 「いいって。ただ目が合っただけだから。」 新藤が少し体勢を変えて、こちらを凝視する。 凝視というのは大げさかな。きっとこいつは、ただ俺を見てるだけ。視界に俺が入っているだけ。 「やっぱかっこいいよな、川原。」 「は?」 「いやあ、夕日に照らされて?とかじゃないと思うけど、やっぱかっこいい。」 「普通だろ。」 「髪の毛染めねえの?そういえば、サッカー部のやつらって結構黒髪多いよな。」 勉強を捗らせるためだけの運動みたいなものだからね、部活は。
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