主人公、死ぬ。

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 そうだ、そういう事も十分ありうる事だ、とそのとき初めて気がついた。何しろこれまでの人生で、私がやろうとしたことは、どういう訳かことごとく失敗し、まるっきり上手くいったためしがなかった。これは神が私の覇道に嫉妬しているとしか思えない、そのくらい何もかも上手くいったためしがなかった。もしかしたら今回も・・・・・・。  私の心に、そんな人間的で無意味な不安が広がっていった。何を馬鹿なことを、私はもう神の支配さえも遠く及ばない、絶対の美少女になるのだ。もう神はいない。神は死んだのだ。しかしその一抹の不安のおかげで、私はある大事なことに気がつくことが出来た。  私はまだ、旅だったときと同じ着古したグリーンのジャンパーを着たままだったのだ。野宿と自転車旅行による長旅と風雨のせいで、私のジャンパーはあっちこちほつれて破けてしまっている。肘の所は特にむごく、ジャンパーの綿がそこからはみ出していた。 「やれやれ、私としたことが、これから美少女に転生しようというのに、こんな色気もお洒落心も無い格好のままで死のうというのか。これではせっかく美少女に転生しても、心は醜いアヒルの子のままだ。プッ、アッハッハッハ」     
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