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夜動怪談(やどうかいだん)
僕等の周りではそう呼ばれていた。
夜中、二時から三時くらいまでの間、近所の吉良州(きらす)公園でおかしな事が起こる。
誰もいないのに子供の笑い声が聞こえたり、街灯が点滅したり‥。
ブランコを漕ぐ少年が、手招きして名前を呼んでくるなんて話もある。
その少年に近付くと、大変な目にあうとか‥。
「バカバカしい、誰が広めたデマだよ。」
「んな事言ってもいいのか翔悟(しょうご)?」
「言ったら何だってんだよ、何かマズいのか?」
「災いが起こるぞー!」
「ったく、俺達もう中2だぞ?
災いでも何でも来いってんだ、打ち返してやるよそんなもん。」
「さすが野球部のエース、容赦ないねぇ」
美濃 翔悟14歳 近くの中学に通う中学生で野球部に所属してる。隣のうるさいのは野球部で同じクラスの智史、いつも一緒に登校してた。その日は朝練が無かったから、遅めに起きて、門の閉まるギリギリの時間に学校に着いた。
「きりーつ、礼」
「おはよう」 「おはよう御座います。」
いつもの様に朝の会が始まったけど、何だか重たく厚い空気を感じた。そしたら案の定、先生は、嫌な話をしてた。
「え~実は昨晩から、奏都君が家へ帰っていないそうだ。学校へも残っていなかったらしい。心当たりのある人がいれば教えてほしい」
「帰ってない‥。」
実質的な、行方不明だ。
橘 奏都(たちばは かなと)、同じクラスの同級生だ。深い面識はなかったけど、大人しくて、トゲなんかは無かった奴だったと思う。
「とにかく、下校時は気を付けるように。‥特に夜道にはな。」
「…‥」
担任の先生は、何だかよそよそしかった。嫌な噂が広がる事を恐れていたのか。案の定、危惧していた事は、その直後にすぐ起きた。
「ねぇ聞いた?
行方不明だって~。」「昨晩からだって」
「これって夜動怪談じゃない?」
「ブランコの少年に呪われちゃったんじゃない?」
「やだー、かわいそう。」
「な、聞いたか翔悟、行方不明だってよ?
これってやっぱ夜動怪談の‥」
「やめろよ‥。」 「怒んなよ、冗談だろ」
「‥ったく」 「おいどこ行くんだよ?」
「トイレだよ!」
ほんとに、どいつもこいつも夜動怪談夜動怪談‥。いい加減にしろ!
「夜中に出歩く様な奴でも無いだろ‥話した事ねぇけど。」
流行り言葉となりつつあったそれに、嫌気がさしていたのかもしれない。執拗に腹が立った。
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