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だからだろう。僕が、大した面識もない同級生の為にあそこまでしたのは。
「話ってなんだ美濃君」
「朝のホームルームの事なんですが‥」
「奏都君の事か。」
その日の放課後、何故か僕は先生と橘 奏都の話をした。先生の話によれば、部活帰りの奏都君は、夜遅くになっても家に戻らず、親御さんから学校へ連絡があったようだ。
「夜更かしをする様な子では無いんだが‥」
「…先生は、知っていますか?」「‥?…」
何故、口走ったのだろう。顔を歪ませる結果になると判っていた筈なのに。
「あの噂‥夜動怪談の事…。」
先生は「やっぱり!」と目を見開いた後に、丁寧に答えてくれた。
「丑三つ刻近くになると、妙な事が起こるって‥。吉良州公園の噂だろ?」
おそらく、クラス中の様子も把握済みだろう。
「それに、奏都君が巻き込まれたと思うのか?」
自然と任せるべきだけど、僕は正直に答えた、だって思ってなかったから。
「いいえ、思いません。」 「そうか‥」
捻くれ者、クラスでは思われると思うけど
「当たり前だ、そんなものに巻き込まれる訳は無い。きっとすぐ見つかるよ!」
先生は笑顔でそう言ってくれた。
「…はい‥!」
なんか、嬉しかった。自分の中の苛々が、一気に晴れた気がして。それが身を助けたのか、僕の中の好奇心を、もう一つ育てた。
「え、部活休むのか?」「ああ。」
「お前がサボるよ珍しいな!」
「その分自主練するよ、たまには一人で」
その日は、早めに下校して、寄り道した。
「‥ここが例の。
結構ウチに近いんだな」
皆んなが噂する、吉良州公園に行ってみた。近所にある事は知ってたけど、来るのは初めてに近い。
「静かで、いいな」
話で聞く程不気味な所じゃ無かった。寧ろ風は気持ちいいし、人も少ない。お陰に夕陽が凄く綺麗だった。
「いい場所だ」
そこで暫く素振りして、家に帰宅した。
落ち着いた自主練をしたからか、家に帰った後もすこぶる調子が良かった。時間の余裕があった事も大きいが、勉強が捗り、自由な時間も多く取れた。悪い噂とは裏腹に、僕の身には良い事ばかりが訪れた。
「今日はここまででいいか‥。」
部活に追われなかなか勉強の時間が取れておらずテストの追い込みに焦っていたが、時間を最大に使いなんとか追いつく辺りまで進める事が出来た。
「うっわもうこんな時間だ‥!」
時間はもう、深夜の二時半を過ぎていた。
「明日朝練あんじゃん」
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