スマホ病

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「解せぬ」  …昨今の人間は様変わりした。  いや、本当。本当なんだって!  闇を領域にする幽霊や妖怪を怖がる処かアニメや漫画にしてしまうなど、正気の沙汰ではない。  ーーーなんて落ち着いたナレーションを気取っている私といえば、しがない幽霊である。  道路脇に供えられた花と水でお分かりだろう、つい3日前にここで死んだ。  歩きスマホによる、前方不注意で。  うん、あれは見事な即死だったなあ。はっはっは!  元々、ここは交通量が激しくて死亡事故が後を絶たない、いわゆる「魔の交差点」と呼ばれる場所…なの、だが。  実際は幽霊(私以外の)が出没する訳でなく、単に交通量と運転手の前方不注意が招いた呼び名という事を、最近理解した。  今なんか、女子高生らが「3日前ここで人死んだらしーよ?」「へー。じゃあじゃあ、ここで写真撮ったら映るかな!」なんて騒いでいる。  ーーー罰当たりめ、どついたろか! いや、実際触れないんだけどね。  ああ、やかましい。頼むから早くどっか行ってくんないかなー。  なんて言ってたら、某動画配信アプリなんか撮影しだした。  なんなんだ、この女子高生とかいう生き物は。何が楽しくて交通量半端ない交差点で踊ったり跳ねたりするのか、まったく意味不明だ!  というか、これが例のスマホ病とかいうやつじゃないのか?   (それが原因で死んだので、偉そうに他人のことは言えないが)いや。何かに取り憑かれたように躍り騒ぐ原因がスマホにあるのなら、それは間違いなくスマホ病だといえる。  とりあえず、ある意味危険なので…ちょいと失礼。 「あー!スマホ落ちたっ、なんで!?」 「やだあたしもーっ、もー…信じらんない」  …アプリ云々含め、歩きスマホはやめましょうよ?  うっかり死にたくなきゃ、ね。 「心霊現象かな!」  一人は楽しそうにはしゃいでいるが、 「かもしんないね、だってここ事故現場っしょ」  どうやら、スマホ故障で一気にテンションダウンしたらしい女子高生のもう一人が、微妙にキョロキョロと視線をさ迷わすのは…そういうことだろう。  表情には、あからさまな「恐怖」が表れている。 「帰ろっ」 「ちょっと待って、なに…どうしたのよ急に~っ」  あれから一週間。どうやら帰り道を変えたらしく、退散していった女子高生らを交差点(ここ)で見掛けることはなくなった。
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