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「高森さん、シーサイドの資料です」
「あ、ありがとう」
事務の川原さんから受け取った書類に視線を落とした。
来年完成予定の分譲マンションの資料だ。川原さんはもう五年目。だけれど、渡されたそれは、ちらっと見ただけで分かるくらい不十分なものだった。川原さんは何でも雑に済ますきらいがある。
僕は彼女を呼び止めた。
「川原さん、ごめん。ちょっと待って」
無意識に彼女へと伸ばした手、僕の声に振り返る彼女。
――ふに。
彼女の頬に、指が触れた。
真っ白な頬に、指先が沈み込む。その指先を襲ったのは、とてつもないほどの柔らかさ。
僕の思考は、止まった。
「えっと……?」
僕に頬をつつかれたままみたいな状態の川原さんが、困惑げな声を出す。
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