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「ご、ごめん……!」
慌てて指を離す。
僕から離したはずなのに、彼女の頬は僕の指を跳ね返した。
それにまたしても意識を持っていかれそうになり、川原さんの「なにか?」が僕をこちらへと引き留める。
「あ、ああ……えっと、これだとちょっとわかりづらいから、もう少し詳細に作り直してもらっていいかな? グラフ付けたりとか。戸塚さんそういうの詳しいから教えてもらって」
「はぁ、わかりました」
会釈程度に頭を下げ、自分の席へと戻っていくまるい背中を見送る。
彼女に触れた中指が、熱を持っていた。熱いお湯に触ってしまった後みたいに、表面も芯もじんじんと熱くなっていた。
僕はその感覚の残った指を握り締める事も他の何かに触る事も出来ず、ただ見つめた。
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