決心

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決心

足首の痛みがジワジワと広がる。 波乗りを始めたばかりの頃、怖いもの知らずだった俺は、初めて入った河口で波待ちをしていた。 幅を効かせるローカルのせいで、ろくに波を捕まえられない。 腹立ちを募らせていた時、絶好のうねりが入ってきた。 次こそ、と腕に力を込め、譲るものかとサーフボードに立ち上がろうとした瞬間、すぐ真後ろに来ていた男から 「おい。」 と凄まれ、その男のボード一降りでバランスを崩し、海底の硬い岩場に滑り落ち、右足首を骨折した。 無様としか言い表せない状況 痛みと悔しさが込み上げたが、ボードに身を乗せ、浜に帰るしかなかった。 血気盛んな高校生がまともにリハビリなど受けようはずはなく、さっさと波乗りを再開した足は、二十年後の今では、何もしなくても鈍痛がまとわりつき、医者にはとっくに、波乗り禁止と告げられている。 そんな体の不調に加え、最近まったく海に来なくなった彼女との関係に、気付かないふりを通すのもそろそろ限界で、俺は今年いっぱいで波乗りにケリをつける決心をした。 幸い採用面接を受けた不動産会社に、来年始めから雇って貰えるようになっていたし、12年間通ったカフェのバイトは、12月25日まで、ということで無口なマスターに話をつけた。 彼女には何も話していない。 最近はうつむいてばかりの彼女の満面の笑顔は、クリスマスイブまでお預けだ。 バイト代で買ったパールの指輪は、青いビロードを貼った丸い箱に納まり、ダッシュボードの底で出番を待っている。 さくら、待たせた。 お前が好きだ。 結婚しよう。
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