悪路を鷹は行く

12/14
102人が本棚に入れています
本棚に追加
/383ページ
 一方政暁が紅原の屋敷の戸を叩くと、とたとたと足音が聞こえ、戸が開いた。 「兄上!今まで何処に……じゃない」 一瞬、戸を開けた主である少女は怒ったような表情をしたが、戸を叩いた男が兄じゃないと分かると意気消沈したのかがっくりと肩を落とす。 「すまないな君の兄上ではなくて。君は時雨殿の妹君かな?」 政暁がそう聞くと、少女は困惑したような顔をした。 「はい。そうですけど……貴方は?」 政暁は言うかどうか迷ったが、いきなり藩主の嫡男が来たと知ると少女が混乱するのではと思い、一旦素性を隠すことにした。 「私は時雨殿の友人でね。火急の用があって来たのだが、留守の様だね。………それより、紅原殿の式神が大変なことになっているようなんだ。お願い出来るかい?」 「え?式神なんて何処にも………もしかして影縄!?」 少女があっと驚くと、政暁の影からずるりと黒い蛇が這い出した。火傷を負ったような影縄の様子を見て、桃香と呼ばれた少女は青ざめると影縄に駆け寄った。 「影縄どうしたの!?もしかしてさっきの変な突風?」 「はい……。桃香様、すいません。桔梗を呼んで来て下さいませんか?あと騰蛇も」 「騰蛇はさっき父上と社の方に向かったけど桔梗ならまだいるわ。待っててすぐ呼んでくる」 そう言うと少女は廊下を駆けていった。
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!