悪路を鷹は行く

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「へっ……くし!」 やっと雨風をしのぐことが出来ると、政暁は自分の身体がどれだけ冷えていたか実感した。寒い。もう夏である筈なのに雨に濡れるとこんなに寒いのか。着替えか何かが欲しいが頼んでみようか。政暁が寒さで身体を震わせていると、少女が「桔梗」という人物を連れて戻ったのか、また急ぐ音が近づいてきた。少女の後ろから歩いてきたのは、女だった。膝丈程ある長い土器(かわらけ)色の髪を腰のところで緩く結び、瞳は桔梗の花の色ような瞳は静かに黒い蛇を見据えていた。女は蛇を抱き抱えるとからかうように笑みを浮かべる。 「影縄、災難だったねー。今のところの報告だと、まともに荒御魂の神気を受けた者は恐らく君だけだよ。こんな雨の日だったからみんな外に出てなかったようさ。………で、そちらの君は?そういえば、君が怒鳴って名乗りを上げたときに言った名は……」 おどけるような声音は先程の結界に触れた時に聞こえた声と同じだ。それに術師ならともかく、この女からは妖気を感じる。式神の類いだろうか。政暁は、桔梗と呼ばれる女が人間ではないことを悟った。
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