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「で、これからどうするのだ。時雨を探す以外選択肢なんてあるのか?」
あの神気が気になってしょうがないのだ。俺の知識の範疇の外にあるような未知の出来事が起こっている。そして、あの悪夢と今朝聞こえた時雨の助けを求める声。それだけで、時雨にとって耐えられないような出来事が起こっているような気がするのだ。それなのに、今俺はぬくぬくと屋敷で雨宿りをしている。今すぐ時雨に会いたい。辛い目に遇ったのなら抱きしめたい。だから早く探さなければならないだろう。
「まず、君には帰ってもらおう」
桔梗は、真顔でそう言った。
「……………は?それはどういうことだ!」
何をこの女狐は言っている?政暁は自分の思っていたことと真逆のことを言われて思わず立ち上がった。………が、何故だが上手く立ち上がれずふらついてしまう。
「貴様………何か………盛ったのか……!」
おかしい、瞼が異様に重くなって身体も鉛のように重たくなっていく。政暁は意識を失わぬように腕に爪を食い込ませて僅かな意識を持たせる。
「藩主の息子と言ったって所詮はただの見える力だけが強い非力な人の子。君は何もせずに眠っておくといい」
「ふざけるな…………!」
政暁は桔梗の胸ぐらを掴もうとしたが、起き上がれないほど強烈な睡魔が政暁の意識を潰していく。畳の上に這いつくばって睨みつけている政暁を見下ろすと、桔梗は手で政暁の目を塞いだ。
「眠っている間に全てが終わる。………霊力も使えない人間風情が我らのことに首を突っ込むな」
桔梗の蔑んだような言葉を最後に政暁の意識は深い闇に落とされた。
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