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政暁が眠り薬を盛られて意識を失っている頃、泉一は小屋に辿り着いた。雨風がこんなに吹き荒れているのに、何故小屋の戸が開いている?嫌な予感がしかしないが、入って確かめて見ないことにはいけないだろう。恐る恐る小屋の中に入ると、泉一は息を飲んだ。全員床に倒れており、そのうち一人は手を床に小刀で深々と縫い留められており、数人は骨が普通ならば有り得ない方向に折れ曲がっている。恐らく骨折したのだろうか。一応息を確かめようと小屋に入ると、泉一は床が雨水ではない何かでぬるぬるとしていることに気がついた。何なんだ?泉一が床の液体を指で掬ってそれを見て臭いを嗅いだ瞬間、目を見開いて固まった。こいつら…………まさか本当に。慌てて時雨を探したが、時雨の姿だけない。倒れている奴らを問い詰めようとしても息があっても全員意識がない。怪我の具合を確めてみても、出血量はそれほどない。手を小刀で貫通しているやつがいるが、床に縫い留められているので、これほど飛び散る筈は無いのだ。ならば、この白濁液を赤く染めている血は誰の血だ。嫌な臆測が次々と頭に浮かび泉一は舌打ちをした。何があったのかは想像がつく。だが、何がどうなってこうなったのか。その説明が欲しい。
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