102人が本棚に入れています
本棚に追加
泉一が小屋の中を見回すと部屋の中央に火鉢が置いてあった。何故火鉢が?外側に触れてみるとまだ温かい。ということは先程まで使われていたということだ。中を確めて見ると、炭は雨水で濡れたせいかもう火が消えている。その中に何か細長い燃え滓のようなものがあった。
「何だこれ?」
慎重に灰を払ってみると、赤く綺麗な糸の切れ端が見える。何かを燃やしたのだろうか。何かの証拠になるかもしれない。そう思った泉一は、念のためその燃え滓を柿渋で染めた紙で包んで懐に入れた。包み終わって、他に何かあるのかを確認してみる。幸い下衆どもの怪我は死ぬほどじゃない。調べ終わって頭領に突き出すための証拠を探すまで放置しておこう。すると火鉢に隠れるように香炉が置かれていた。香炉も雨風に濡れたせいで、もう薫りが周りにしていない。香炉なんて使って一体何をするというのだ。泉一は香炉の灰を手に載せて臭いを嗅ぐ。
「………!?げほっ………おえっ………!」
泉一は臭いを嗅いだ途端、噎せかえってしまった。こんなもの何処で買ったというのか。灰を吸っただけで身体が不自然な熱さを覚える。泉一は出来るだけ、吸い込んだものを吐き出すように咳き込んで膝を付いた。恐らくこれは催淫用の何かが入っていたに違いない。しかし何故だ?こいつらは今まで時雨が凌辱で反応しなくても、暴力行為で満足していたではないか。今更催淫の香を使う必要などあるのか。
最初のコメントを投稿しよう!