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とある街の外れ、栄えているところから少し離れたこの場所に集まる4人の男女がいた。
決して治安がいいとは言えないこの場所で、人々が寝沈まるこんな真夜中に話をしていた。話の内容はたいした意味はない。ただ、制度が厳しくなって生きにくくなったとか、最近こんなことがあったとか世間話もいいとこである。
「それより、ヴェノムの花嫁(ジニーフ)はまだ生まれないのか?」
「知らねーよ」
ヴェノムの呼ばれた青年は投げやりな態度で答える。
「オレよりは若いっていっても、もうそろそろ生まれてもいい頃だろ?」
オレだってオマエくらいの頃にはもう花嫁(ジニーフ)を育ててたしな。
からかう男の左薬指には鈍く輝くマリッジリングがはまっている。
「そうね~花婿(ジニーフ)がいる生活っていいものよ~」
濃い赤色の長髪を背中に払いながら女は言う。
「そんなに言ったって生まれる気配すらねーんだからどーしようもねーだろ?」
花嫁(ジニーフ)のいる生活を自慢されたところでヴェノムには分からない。それに満ち足りた生活を送れることを見聞きしているからこそ憧れと焦燥感がつのって仕方がない。
「ヴェノム、もし、…じ、ジニーフが、生まれたら…どうするの?」
同じテーブルを囲んでいた最後の1人が口を開く。
「どうするって?」
「ほら、オレ見たいに数日で親のところから攫って自分好みに育てるのか」
「私のジニーフみたいに手がかからなくなる10代くらいまで育ててもらってから拉致してくるのか~」
次から次へと物騒な言葉が並べられる。
「分からない…」
「まあ、この感情が分からないと難しいわよね~」
赤髪の女は自分の指に収まっているマリッジリングを愛おしそうに撫でる。
「私たち、悪魔は…、感覚が、違うから…ね」
片言で話すボブカットの女に、3人はうんうんと首を縦に振る。
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